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ビーチリゾートの専門業者

30年ほど前、私がまだ学生だったときのことである。 当時名古屋大学法学部の学生だった私が、名古屋の繁華街を歩いていたとき、「アンケートに協力してほしい」と声をかけられた。
アンケートに答えると、無料で映画を見ることができるチケットをくれるという。 急いでいたので断って通り過ぎてしまった。
私にとって記憶に残る、世にも不思議な体験だった。 その後も、あれはなんだったのだろうかという疑問が長く残ったのである。
無料で映画を見ることができるチケットとはどんなものだろうか。 ど映画館でも、いつでも、そのとき上映している好きな映画を見ることができるのだろうか。
本当だろうか。 もしそうだったら、あのとき私は断ってしまって損をしたのではないだろうか、といった疑問である。
そう思う反面、そんなうまい話があるはずもないという気もした。 だったらどんな落し穴があるというのだろうか。
それがわからない。 長年の疑問が解けたのは、私が弁護士になって数年目のことである。
たまたま悪質訪問販売による被害者の代理人となったことから、消費生活センター(当時は、東京都では消費者センターといっていた)の存在を知り、消費生活センターで相談に従事する人々と勉強会を持つようになった。 ころから消費者契約被害が増え始め、消費者相談にも法律的な知識が求められるようになっていたためであった。

弁護士は悪質商法被害を学び、相談担当者は契約に関する法律知識を学ぶという交流を行なった。 そうしたなかで、キャッチセールスという若者を狙う悪質商法があることを知った。
私が体験したのは、キャッチセールスとのニアミスだったのである(キャッチセールスについては、本文を参照されたい)。 振り返ってみれば、これが私自身の悪質商法初体験だったわけである。
消費者の多くが、多分似たような体験を持っているのではないだろうか。 被害にあったことはないという人でも、ニアミス体験は少なくないはずである。
その後も20年以上にもわたり、消費生活センターで消費者相談を担当する人々との勉強会を続けてきた。 弁護士として法律相談に乗り、訴訟事件なども多数手がけてきた。
その間も悪質商法は減るどころではなく、消費者被害は激増し続けてきた。 取引方法が多様化して悪質商法手口も多様化しているが、それだけではなく手口の悪質化は目を覆わんばかりの状態である。
目に余るほどの悪質商法のはびこりようを反映してか、悪質商法を取り上げた書物が相次いで出版されている。 単に悪質商法の手口を紹介するだけにとどまらず、弁護士としての体験に基づいて「契約」という視点で悪質商法を捉え、被害にあわないための「賢い契約をするためのポイント」を紹介している。
規制緩和のなかで事業者に求められている「コンプライアンス」にも触れている。 悪質商法を防止し、淘汰していくためには、単に法律を強化して処罰すればよいというものではない。

一人一人の消費者が「よりよい契約とは何か」を考えつつ、慎重に良心的な業者と商品やサービス、契約を選ぶ姿勢が必要である。 被害にあったときに泣き寝入りしないことも大切である。
事業者には、高いモラルと経営にコンプライァンスの姿勢を継続的に取り込む姿勢が重要である。 本書がそのためのヒントになれば幸いである。
毎日のように悪質商法被害がマスコミをにぎわせている。 テレビのワイドショーなどでもしばしば取り上げられ、悪質商法の特集は高視聴率を上げているという。
最近では、消費者を取り巻く悪質商法は、ごく日常的なメジャーなものになったように思われる。 現代的な悪質商法が社会問題となったのは、高度経済成長を迎えた1960年代のことである。
だが、それ以前にも消費者問題は存在した。 生活物資が消費者の必要なだけ供給されない、消費者に提供される商品の品質が悪すぎるから良質な商品を提供するべきだ、といった消費者問題は、敗戦直後から深刻であった。
敗戦直後には、銀行が信頼されていなかったため、銀行に預金するのは危険だからと元本保証・高利回りをうたい、庶民の現金を預かって夜逃げや倒産をしてしまうという「利殖商法」も多発した。 1960年前後には、何の肉かわからない原材料で製造された「ニセ牛缶」が販売されていることが社会問題となり、商品選択のためには製品表示が正しくされている必要があるから、適切な表示をさせるべきだ、といった製品表示をめぐる社会運動が盛り上がった。
その後高度経済成長を迎え、大量生産・大量販売・大量消費の時代に入ると、生産した商品を店頭に並べていれば売れた状況は変わりつつあり、店頭にこない消費者に対してどのように今では若者の街の風俗のようにいわれているキャッチセールスも、同様に時代に生まれた悪質訪問販売の典型的手口である。 わかりやすくいえば、自分から必要だと思う消費者は、店頭まで商品を買いにくる。

大量に生産した商品をさばくにはそれだけでは十分ではない。 必要だと思わない消費者にも契約させて売り上げを伸ばしたい。
そのためにはどうすればよいか、ということである。 そこでまず、眠っているニーズを掘り起こす販売方法として、訪問販売がさかんになってきた。
悪質商法の典型のようにいわれ、現在も多数の被害を引き起こしている催眠商法が始まったのも、1960年代後半のことである。 ころ、家庭への訪問販売で、しかも悪質であるということが社会問題となり、「訪問販売等に関する法律」が制定されるきっかけとなったのが、いわゆる「ブリタニカ商法」といわれたもので、悪質訪問販売の走りであった。
販売していくか、ということがテーマになった。 スマートに表現すれば「消費者の眠っているニーズ」を掘り起こすにはどうすればよいか、ということが産業のテーマになった時代であった。
その後、規制緩和と不況の時代といってもよい平成の時代に入ると、ますます消費者被害は増加していった。 高度経済成長時代型の特殊販売ともいえる訪問販売、通信販売、マルチ商法トライン、自動車用品を取扱商品としていたジェッカー・フランチャイズチェーンやホリディマジック社などのマルチ商法も社会問題となった。
アメリカで行なわれていた商法が、アメリカ連邦取引委員会で不当な取引方法とされてアメリカ国内では販売活動が制限されたことから、日本に上陸して蔓延していったものである。 アメリカでは、マルチレベルマーケティング・プラン(多重階層式販売システム、MLM)といわれていたものが、略してマルチ商法といわれるようになったものである。
通信販売も行なわれるようになった。 通信販売は、店舗まで出向くことができない遠方の顧客に対しても販売することができるため、マーケットに広がりが出る。
コストのかかる店舗を持たなくても、販売活動をすることができる点でも、事業者にとってはメリットがある販売方法であり、急速に広がりつつあった。 当時は通信販売のための広告のルールが整備されておらず、必要な情報が記載されておらず、実物とは異なる虚偽・誇大広告など、様々な不当広告が用いられるようになっていたことから、社会問題となっていた。

不当請求は、悪質商法というよりも、恐喝・詐欺行為であり、犯罪そのものである。

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